工事代金トラブルシリーズVol.5 施工業者ですが、弊社の債務不履行を理由に工事請負契約を中途解約され、発注者と工事代金額で揉めています。詳細見積書がありません。どうすればよいでしょうか?

【相談内容】

施工業者ですが、弊社の債務不履行を理由に工事請負契約を中途解約され、発注者と工事代金額で揉めています。詳細見積書がありません。どうすればよいでしょうか?

【回答】

よく受けるご相談です。問題となる項目ごとに回答します。

この場合、次の4点が解決に向けたポイントになります。

1 施工箇所の確認

裁判になった場合には、施工済みの部分を、客観的な証拠で証明できる必要があります。施工写真があればよいですが、ない場合には、協議のなかでどこまで固めることができるかポイントとなります。

2 出来形の工事代金相当額の査定

誤解を恐れずに言えば、出来形により注文者が利益を受けるときは、請負人はその利益割合に応じて報酬を請求できます。つまり、施工業者は、出来形の工事代金相当額及びそれにより発注者が利益を受けたことを立証する必要があります。

例えば、契約解除後に、出来形を利用して工事の続行が可能な場合には、発注者が利益を受けたといえるでしょう。また、出来形の工事代金相当額については、公共工事単価・数量、部材費・人件費の合計額、御社の下請への支払金額等をベースにやりとりしていくことになります。

3 発注者からの損害賠償請求

貴社の債務不履行による解除により発注者に生じた損害について請求を受ける可能性があります。上記2と精算することになります。

4 契約不適合責任(瑕疵担保責任)

(1)施工業者側の債務不履行解除の場合は、同時に契約不適合の責任(瑕疵担保責任)が問題となるケースが少なからずあります。

(2)業者さんの中には、稀に、工事代金を先に支払わなければ補修工事をしない!といって、施主さんと喧嘩別れになるケースがあります。法律上は、修補工事をしなければ、原則として未払工事代金全額について支払を受けることができません。しかし、喧嘩別れになるのではなく、修補工事を施工するにせよ、修補代金相当額を支払うにせよ、契約を解除するにせよ、決裂をするのではなく何らかの合意をした上で、次のアクションにうつることが大切です。深刻なトラブルであっても、裁判に至らずに解決できるケースでは、まさにそのような対応をとっています。