【質問】
建物共有者の一部に所在等不明共有者がいますが、この場合、リフォーム工事を受注できないのでしょうか?仮に受注できた場合、弊社と契約をしたお客様は、そのリフォーム工事代金の一部を、他の共有者に求償請求できませんか?
Aさん20%、Bさん20%、Cさん60%の割合で共有しており、Cさんが所在等不明共有者です。
【回答】
1 リフォーム工事ができるかどうか
(1)雨漏り対応等のリフォームは、建物を保存するためのものであるため、共有者1人単独で行うことができます。
(2)建物価値をあげて賃料をアップするためのリフォームは、「共有物の管理」に該当するため、共有持分の過半数の同意が必要です。
原則)Cさんに60%の持分があり過半数の同意がないため原則リフォーム工事はできません。
例外)共有者のうち所在等不明共有者がいるケースでは、裁判所の決定により、
当該不明者以外の共有者の持分の過半数同意で、リフォーム工事をできる可能性があります。
2 建物の建て替えができるかどうか
裁判所の決定を受けたとしても、所在等不明共有者の共有持分を失うことになる行為(建物の滅失、抵当権の設定等)はできません。
3 リフォーム代金を負担した共有者は、Cさんを含む他の共有者に持ち分割合に応じて、工事代金を請求できるかどうか。
● 収益不動産のケース
当該リフォーム工事が「保存行為」「共有物の管理」に該当すれば、求償請求できます。
リフォーム工事の内容・各費目の費用と利回り的な計画を明確にし、求償請求時に、合理的なリフォームであることを明確にできるよう準備することが大切です。裁判例では、個人的な理由による支出や不相当に高額な支出は「管理の費用」に該当しないと判示したものもあります。
● 共有者の一部が当該不動産に無償等で居住しているケース
理論上は、以下のとおりになりますが、安易に求償請求できる等と説明すると、リフォーム会社は後日のトラブルに巻き込まれる高いリスクがあります。
ⅰ 使用貸借契約が成立している場合
居住するにあたり通常必要な費用は、当該居住共有者が負担することになります(民法595条)。
通常の必要費以外は、各共有者が持分に応じて負担することになります(民法253条1項)。
ⅱ 使用貸借契約が成立していない場合
賃料相当額のうち自己の持分を超える部分について、他の共有者に対し、不当利得を返還する義務を負います。他方、リフォーム費用が「保存行為」「共有物の管理」に該当する場合には、求償請求権と不当利得返還請求権は相殺の対象となります。
4 求償請求に対し、他の共有者が1年以内にその支払いをしない場合には、相当の償金を支払うことで当該共有者の持分を取得できます(253条)。