「借地上の建物と建築工事」シリーズVol.2 借地上の建物の再築依頼を受けたのですが、何を注意すべきですか?

【質問】

借地上の建物の再築依頼を受けたのですが、何を注意すべきですか?

【回答】

(1)借地権設定時期が平成4年8月1日よりも前の場合(旧法借地権の適用がある場合)

 

① 借地権設定契約に増改築禁止特約ある場合の注意点

トラブルに巻き込まれないためには)

  貸主の承諾 OR 承諾に代わる決定(裁判)(借地借家法附則4条、同法17条) があることを確認する必要があります。

 

注意点1)借地権設定契約に定めのある用途制限違反に注意が必要です

  例えば、リフォームにより、当初の用途(借地人の居住用)を変更する(賃貸用の共同住宅として使用)ことになる場合、用途制限違反を理由に、借地契約が解除されるリスクがあります。リスク回避策としては、用途制限違反を理由とする借地契約の解除について請負業者を免責する旨の特約を入れる必要があります。

注意点2)承諾なき増改築の顛末は?

  貸主と借主の信頼関係が破壊されたと認定されれば、契約が解除され、借地権が消滅します。貸主に無断で、居住用建物の一部の根太などを取りかえ、二階部分を拡張してアパート用居室として他人に賃貸するように改造をしたが住宅用普通建物として前後同一である等の事情のもとで、増改築禁止条項違反を理由とする解除は認めないとした判決もありました(最高裁判所昭和41年4月21日)が、少なくとも裁判に巻き込まれるリスクを回避するために、上記の対応が原則です。

 

② 借地権設定契約に増改築禁止特約ない場合の注意点

原則) 貸主の承諾なく、改築ができ、しかも、借地権は基本的には有効に存続すると解されています。

  残存契約期間を超えて存続する改築に対し、貸主から遅滞なき異議がなければ、旧建物滅失日から、堅固建物は30年間、非堅固建物は20年間、賃貸期間が伸長されます(借地法7条)。他方、異議があったとしても、借地権は有効に存続し、契約更新時において「正当の事由」の有無が判断されます。

 

例外)なお、大規模修繕により建物の存続期間が物理的には延長されたとしても、修繕前の建物が朽廃したであろう時期に借地契約は終了するとの判決があります(最高裁昭和42年9月21日判決)。改築についても同様に解される可能性が十分にあります。

 リスク回避策としては、建物の朽廃による借地権の終了に伴う一切の損害や責任は発注者が負担する旨の特約を入れる必要があります。

 

(2)借地権設定時期が平成4年8月1日以降の場合(借地借家法の適用がある場合)

★ 旧法借地権と同日以降の借地権の保護の態様が全く異なることに注意ください。

 

原則)増改築禁止特約の有無にかかわらず、貸主の承諾やそれに代わる決定がない限り、建築工事を受注しないことが肝要です。

  トラブルに巻き込まれないためには、

  貸主の承諾 OR 承諾に代わる決定(裁判)(当初契約期間内であれば借地借家法17条2項、更新後かつ残存期間を超えて存続する改築であれば同法18条)があることを確認する必要があります。

 

注意点1)では、契約更新後に、貸主の承諾などがないまま、賃貸の残存期間を超える建物を再築したらどうなりますか?

  借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができ(借地借家法8条2項)、申入れ日から3か月間経過すると借地権が消滅します(同上3項)。

注意点2) では、契約期間更新後に、賃貸の残存期間を超える建物を建築することにつき、貸主の承諾に代わる裁判(決定)を受けることはできますか?

  借地借家法18条1項では、借主に「やむを得ない事情」があるときに、承諾に代わる決定を出すことができると規定されており、原則当該再築を認めないという立て付けになっています。

                                               以上