「取引先が倒産?」シリーズ Vol.6 元請業者ですが、1次下請が2次下請に工事代金を支払わないので、2次下請に直接立替え払いしてもよいでしょうか?

【相談】

① 元請業者ですが、1次下請が2次下請に工事代金を支払わないので、2次下請に直接立替え払いしてもよいでしょうか?

② 元請業者ですが、1次下請が不払いを起こしたので、2次下請に直接立替払いしたところ、その後、1次下請の破産管財人から、工事代金の請求をされました。支払わなければならないのでしょうか?

【回答】

よく受けるご相談です。元請業者が、本来1次下請に支払うべき工事代金を、直接2次下請へ支払った場合(立替払+相殺)に、その支払いが有効かどうかという問題です。

1 「支払停止」前の支払い

この場合には、元請業者の2次下請に対する支払いは有効になります。

「支払停止」というのは、例えば、1次下請が2次下請に対し、弁護士を通じて、これ以上の支払いは一切できませんという通知を送った場合がこれに該当します。曖昧な場合には、必ず専門家にご相談ください。

2 「支払停止」以後の支払い

(1)元請・1次下請間の契約書に2次下請に対する立替払いの規定がある場合

1次下請が民事再生を申立てた後に、元請業者が2次下請に対して行った立替払いを有効とした東京高裁の裁判例があります。

ここでは、以下の全てをクリアーした場合に、立替払いを有効としています。

① 立替払い等の規定の存在

② 立替払い・相殺の必要性・合理性が認められ、権利の濫用にあたらないこと

*東京高裁は、立替払いの意義を、2次下請に対する立替払いによる工事続行・完工にあるとしたうえで、工事完成後の立替払いは支払いの必要が無いので権利濫用にあたると指摘しています。一方で工事完成後であっても、建設業法41条2項の趣旨から、例外的に、労務対価部分の立替払いは有効であると述べている。

(2)元請・1次下請間の契約書に2次下請に対する立替払いの規定がない場合

ア 原則論

無断で第三者の債務を弁済することはできないため、2次下請から1次下請に対する工事代金債権の譲渡を受け、これと、1次下請から元請けに対する工事代金債権を相殺するという方法が考えられる。しかし、破産法上、この相殺は認められていない。

イ 例外

2(1)の規定は存在しないが、事実上、元請、1次下請、2次下請で協議をして、立替払・相殺方式での支払いを継続していた場合には、上記の(1)の規定がある場合と同様に取り扱われる可能性がある。

1次下請の破産管財人から元請業者に対し、工事代金の請求があった事件で、当職が元請業者の代理人として、このような対応をしたところ、破産管財人が引き下がる形で幕引きとなった事例があります。